これまでの環境化学物質の健康リスク評価は、成人の生理学に基づいて行われてきているが、小児の生理学に基づいたリスク評価の体系は全く整備されておらず、それに向けての着手が急務である。環境化学物質による小児への影響に関する疫学調査も実施され、その影響を懸念する発表がなされてきているからである。 近年、環境に存在する化学物質による発達期中枢神経系への影響についての動物実験の報告が相次いでいる。こうした中、私たちはラット多動性障害について報告してきている。多動性障害は多因子性疾患としてとらえられてきており、遺伝的素因と環境因子の何らかの相互作用によるものと考えられてきている。そこで、本研究では環境化学物質によるラット多動性障害のエピゲノムからのアプローチによりその遺伝メカニズムを解析した。 1.多動性障害ラット(F0)の作製 生後5日齢の雄性及び雌性ラットに3mg/kgロテノンを単回経口投与した。21日齢まで授乳を続け、4週齢より自発運動量の測定を開始した。21週齢まで測定を繰り返し、対照ラットの自発運動量と比較しながら雄・雌それぞれ最も自発運動量の高いラットを選別し、次世代への影響評価に供した。 2.多動性障害ラットの多世代交配と遺伝様式の解析 22週齢で雄性多動性障害ラット(F0)と雌性多動性障害ラット(F0)を交配した。2系統(ここでA系統、B系統とする)を作製した。A系統より雄8匹雌4匹を得、B系統より雄6匹、雌5匹を得た。上記1.同様に21日齢まで授乳を続け、4週齢より自発運動量の測定を開始した。現在、計測を継続中である。
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