研究概要 |
母子相互作用(遊びの場面)のアセスメント尺度であるJNCATS (Japanese Nursing Child Assessment Teaching Scale)の妥当性(併存的妥当性)について検討した。この作業はNCATSの日本語版開発の最終段階に相当する重要な課題である。尺度の妥当性とはその尺度の適切さを示す概念であり,その下位概念である併存的妥当性については,外部基準(他の類似する尺度得点や行動的変数)との相関関係が検討される。外部基準を提供する尺度,すなわち,JNCATSに匹敵する尺度は我が国では見当たらない。そのため,代替手法として母子相互作用研究における一般的手法(ミクロ分析と時系列解析)を採用し,これらの手法による行動的変数を外部基準とした。ミクロ分析とは母子の一連の行動をカテゴリー化し,各カテゴリーの開始時刻と終了時刻を秒単位で測定する手法である。時系列解析とは,ミクロ分析の結果を基に母子の行動間の時間的要素(行動間の順序やタイミング等)を抽出する手法である。ミクロ分析では各カテゴリーの生起確率(全観察時間における割合)が得られ,時系列解析では母子の随伴的な行動パターン(すばやく適切な対応パターン)に関する対数オッズ比が得られる。53件の健康な日本人母子の相互作用場面についてミクロ分析と時系列解析を実施し,生起確率と対数オッズ比を得た。これらの変数と,同場面のJNCATS得点との相関関係(スピアマンの順位相関係数,有意水準=5%)を検討した結果,弱~中程度の相関関係が認められた。すなわち,ミクロ分析・時系列解析の結果とJNCATSのアセスメント結果が同様の傾向を示し,このことは,JNCATSの併存的妥当性を示唆する根拠と判断された。 また,JNCATSネットワーク事業に関しては,学会における事業内容の紹介,交流集会の開催,専用ホームページの情報の整備に取り組んだ。
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