研究概要 |
多摩川の水から分離した144株のうち120株がグラム陰性桿菌であった.今年度はこれら120検体を分析対象とした.これまでの同定はAPI StaphとAPI 20E(BIOMERIEUX社)によるものであったため,16S rRNA系統解析による遺伝子レベルでのより正確な同定を行った.結果は,API検査キットによるものと一致し,菌はAeromonas sp., Klebsiella sp., Escherichia coli, Vibrio sp., Pseudomonas sp.,その他で,それぞれ64,18,10,8,5,15検体であった.その他に分類されたものは,Acinetobacter sp., Citrobacter sp., Enterobactor sp., Serratica sp.等であった オキサシリン,アンピシリン,セファロチン,セフォタキシム,セフトリアキソン,セフロキシム,イミペネム(IPM),クラブラン酸+アモキシシリン(AMFC),タゾバクタム+ピペラシリン,ゲンタマイシン,エリスロマイシン,テトラサイクリン,ドキシサイクリン,シプロフロキサシン(CPFX),レボフロキサシン(LVFX),スルファメトキサゾール(S)+トリメトプリム(T)の16種類の薬剤に対する耐性試験をおこなったところ,120検体中106検体が3種類以上の抗生剤に感受性を示さなかった.25検体がIPMに感受性がなく,このうち6検体がCPFXあるいはLVFX非感受性菌で,17検体が対象としたセファロスポリン系薬剤の少なくとも1つに感受性がなかった.また,2検体はすべての抗生剤に感受性がなかった このことは,河川における事故や洪水・津波などの自然災害で人々が受傷した際に,抗生剤による化膿創の治療が無効となる場合があること示唆している。また,検体採取場所の抗生剤濃度は,下流域のAMPC,S,Tを除けば,全て検出限界未満であったにも関わらず,分離した菌が多くの薬剤に耐性を示していたことから,環境水中の抗生剤濃度をモニタリングしても,抗生剤による汚染レベルあるいは薬剤耐性菌の存在を予測することは困難であると考えられる.今後,得られた耐性遺伝情報の解析を進めるとともに,結果を早急にとりまとめ,投稿する予定である
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