研究概要 |
小児期のアレルギー疾患は、妊娠中の母の免疫状態と関連するという仮説がある。食事を含む妊娠中生活習慣が、児の免疫にも影響し、後の児のアレルギー発症に関連があるかもしれない。本研究では、妊娠期の食事で、脂質に注目し、前向きのデザインにて、1)妊娠中の母の脂質摂取と臍帯血IgEとの関連、2)臍帯血IgEと出生児のアレルギー発症との関連、3)妊娠中の母の脂質摂取と出生児のアレルギー発症との関連を評価した。 既に、妊娠中の母の性ホルモンと出生時の児の発育との関連を評価する研究に参加した母子の中で、461組が追跡調査を遂行中である。妊娠29週時に母体情報として、5日間食事記録と生活習慣調査を、出産時に臍帯血を採取した。妊娠29週時の5日間食事記録から、五訂増補日本食品標準成分表を基に脂肪酸摂取量を推定した。成分表収載の脂肪酸5種類(飽和,一価不飽和,多価不飽和,N-3系,N-6系脂肪酸)に加え、さらに詳細な脂肪酸摂取量を推定した。出生した子については、1年に1回質問票を郵送し、アレルギーがあると医師に診断を受けたことがあるかどうか回答を得、生まれてから3歳及び5歳までのアレルギー罹患(喘息、アトピー性皮膚炎、鼻アレルギー、食物アレルギー)を定義した。 1)妊娠中の母の脂質摂取と臍帯血IgEとの関連、2)臍帯血IgEと幼児期の児のアレルギー発症との関連については、前年度の報告のように、男女児ともに有意な関係は認められなかった。 今年度は3)妊娠中の脂質摂取との児の3歳及び5歳時のアレルギーとの関連について解析を行った。摂取量を3分位化後、摂取量の最少群を対照とし、それより多い群のアレルギー罹患のオッズ比を算出した。 3歳時の検討で、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペンタエン酸(EPA)の最多群において気管支喘息のオッズ比が有意に低下していた。有意な傾向性は認めなかった。N3/N6比では、摂取最多群において鼻アレルギーのオッズ比が低下した。5歳時の検討では、妊娠中DHA、EPA摂取量は、鼻アレルギー罹患と有意な負の関連にあった。アトピー性皮膚炎、食物アレルギーでは、妊娠中脂質摂取との間に関連は認めなかった。 当研究は、前向き研究であり、妊娠中の脂質摂取が出生後の児のアレルギー発症に影響することが示された。研究実績は、学会にて発表し、現在、投稿準備中である。
|