2002~2005年に滋賀県草津市に在住していた40歳代男性より無作為に選ばれた313名を対象として、腹部脂肪(内臓脂肪、皮下脂肪)の変化およびその関連因子を調べた。今回の調査対象は初回調査から約7年が経過した同一集団であり、現在も滋賀県草津市内あるいは調査協力が可能な地域に在住し、調査参加の協力が得られた者を対象とした。主検査項目は、CT検査による腹部脂肪(内臓脂肪、皮下脂肪)および冠動脈石灰化検査、動脈硬化危険因子として血圧・血液検査などを行った。米国(ピッツバーグ大学)の共同研究で同様な追跡調査を行っており、同様のプロトコールに従ったデータを共有した。 日米で約240名ずつ計490名のデータを用いて解析を行った。 平均追跡期間は約5年。内臓脂肪・皮下脂肪の変化量と以下の因子の変化量の相関係数を、日米で比較した:血圧(収縮期・拡張期)、血糖、インスリン、中性脂肪および冠動脈石灰化指数。全般的に皮下脂肪よりも内臓脂肪のほうが各因子と相関は強かった。また日米で比較したとき、米国よりも日本人集団のほうが全般的に強い正の相関が認められた。例えば、内臓脂肪の変化と収縮期血圧、血糖、中性脂肪の変化との相関係数は日本人でそれぞれ0.23、0.28、0.32であったのに対し、米国人は0.05、0.002、<0.001であった。しかしながら皮下脂肪の変化もインスリンおよび中性脂肪の変化とは有意な相関があり、これは日米を問わず同様の傾向であった。また内臓脂肪、皮下脂肪の変化量ともに冠動脈石灰化の変化量との有意な相関は認めなかった。 これらの結果は、40歳代(中年期)男性の日米比較において、日本人の内臓脂肪量の変化は米国人に比べて、血糖、血圧、中性脂肪との関連が強く、いわゆるメタボリック症候群発症との比較的強い関連が示唆された。
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