わが国の結核対策は結核高まん延状況下の結核対策は全国画一的な対策で一定の成果があげてきたが、結核罹患率が低下し低まん延状況になるにつれて、患者の地域的偏在、社会的偏在、医学的な合併症を持つ高齢者や身体的弱者への偏在などに直面し、その現実あわせた対策が必要となってきている。すでに低まん延状況となっている欧米の大都市では患者の実態に合わせた対策に転換している。 本年度は米国のサンフランシスコ市における現実対応型の結核対策の現状について調査し、わが国の結核対策あり方を示すことを計画し、実施した。サンフランシスコ市の対策のポイントは結核対策を患者の問題解決を行うことを目的として、問題解決のための専門施設・組織(TBC linic)を整備する、また様々な問題を抱えている人々に対応するスタッフの育成し、配置に努力していた。結核対策に関わる新技術や新しいやり方を積極的に導入していた。たとえば発病前の結核感染者対策のために新しい免疫診断法を積極的に導入し、発病予防対策に重点を移し、実効性のある対策に工夫して進めていた。その他には、専門医療機関との連携、結核のアドボカシー組織との連携など地域の資源を活用した対策を進めていた。 わが国も低蔓延下の中で大都市においてはHot Spotと言われる高罹患地域が存在し、問題解決型の結核対策への転換が必要となっている。特に結核問題の認識が低下してきており結核問題のアドボカシー活動にも力を注ぐことが必要となっている。 本研究の一環として、行政、医療の関係者に加え、企業、民間団体、一般市民も参画した結核問題のアドボカシーを推進する組織づくりとその実践活動を行うこともした。本研究の推進とあわせて、全国一結核罹患率の高い大阪市西成区の結核対策の推進体制づくりや、大阪府の結核対策予防計画、大阪市の結核対策基本指針の中に本研究の成果を反映させるアドボカシー活動にも力を注いだ。
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