量的研究として、コホート集団の転帰の調査を行った。平成20年8月末までの情報を整理した。対象者の転出、死亡、要介護状態の発生を確認した。死亡については、死因(簡単死因)を、要介護については、それが発生した理由(医師の意見書)と最初に発生した介護度を調査した。さらに鳥取県地域がん登録を利用して、がんの罹患の有無、発生時期、がんの部位を明らかにした。 質的研究として、町の保健師から推薦のあった合併前の旧岸本町および旧溝口町在住の後期高齢者の訪問面接調査を開始した。ネガティブなライフイベントがあり、身体的健康状態が決してよくなくてもポジティブに生活している人々から共有要因を探るためのテキストマイニングの手法を当てはめている。 疫学的解析を用い、データを解析した。死亡をエンドポイントにした場合は、死亡の予測因子として最も強いのは健康診断を受けないことであり、そのほか、趣味楽しみのないことが関連した。有意ではないが、友人のいないこと、喫煙することが関連する傾向にあった。要介護状態の発生に関する予測因子は、健診を受けないことが関連し、あまり笑わないこと、趣味や楽しみがないことが関連していた。がん死亡をエンドポイントとしても、趣味楽しみのないこと、友人のいないこと、生きがいのないことは関連する傾向になった。がん罹患をエンドポイントにし、高齢での罹患(鳥取県の性別平均寿命よりも高齢の罹患)を打ち切り例として処理した統計モデルでは、健診を受けないことと、友人のいなことが罹患に対する統計学的に有意な危険因子となった。このように高齢者においては、死亡、要介護状態発生、がん死亡、がん罹患のいずれも社会心理的要因が強く関連することが示唆され、それには、生まれつきの性格等だけではなく、ネガティブなライフイベント等をいかに引き受けていくかという後天的な要素がエンドポイントに影響を及ぼすことが示唆される。
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