研究課題
地域在住の高齢者のコホート内において質的研究と量的研究を組み合わせて、高齢になっても前向きに自立して生活できる要因を検討した。研究対象地域は中山間地域である鳥取県伯耆町であった。質的研究では、様々な活動をいきいきとされている高齢者の紹介を得て、その後はスノーボールサンプリングにより調査対象者をつないでいく訪問面接調査を実施し、何歳になっても前向きに社会と接点を持って活動する要因を明らかにした。男性では、仕事や趣味で広がった人的交流が引退後も続くような広がりと活動の場につながった場合が多く、女性では、夫の仕事関係や自分の趣味や役場の活動との接点を途切れることなく続けた中で友達や仲間が広がった場合が多かった。いずれも元々の性格等ではなく、後天的な社会的な要因が大きな役割を果たしていた。次いでこの事例を症例に、性年齢をマッチさせた対照との間で1:4のコホート内症例対照研究を実施し、前向きに生きる要因を平成17年実施の高齢者の生活習慣と生活自立についての調査項目の中から検討した。関連した要因は、趣味のサークルの参加、その他の活動の参加、友人の家を訪ねること、大腸がん検診を受けること、既往症がないことであった。次いで、地域在住高齢者全体を対象にコホート研究のデザインで、エンドポイントを死亡、要介護状態の発生、がん罹患、がん死亡、認知症による要介護発生にとって、関連要因検討を行った。死亡、がん罹患、がん死亡に関連した要因は性、年齢、H17の基本健診受診のみであった。要介護発生の要因は多く、基本健診を受けない、健康度自己評価が低い、入浴介助必要、物忘れ多い、相談に乗らない、大豆製品を食べない、脳卒中・糖尿病・パーキンソン病の既往であった。認知症による要介護の要因は、喫煙、書類が書けない、趣味がない、基本健診を受けないであった。趣味や手段的生活自立、健診を受けるという行動の重要性が示唆された。
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