研究概要 |
【はじめに】主観的健康感が高齢者の予後に大きく影響を及ぼすことが指摘されているが死因との関連を見た前向き研究は少ない。本研究の目的は、高齢者における主観的健康感の有無と生命予後との関係を明らかにすることである。 【方法】1996~98年に愛媛県旧重信町在住の60~84歳の全住民4,545人を対象に実施した調査において、アンケートの有効回答から、がん、循環器疾患の治療中、寝たきりを除外した2,959人を分析対象とした。主観的健康感は、自記式アンケートにより自身の健康について、「非常に健康だと思う」「まあ健康な方だと思う」「あまり健康ではない」「健康ではない」の4段階で把握した。アンケート記入日から2008年12月末までの予後を把握し、死因は厚生労働省への人口動態統計の目的外使用の申請に基づいて把握を行った。年齢、高血圧、糖尿病治療の有無、ADL、仕事、喫煙、飲酒を考慮し、比例ハザードモデルを用いて主観的健康感の低下と死亡リスクとの関連を検討した。 【結果】追跡期間中729人の死亡が確認された。全死亡に対する年齢調整済みハザード比は、「非常に健康だと思う」群を1とした場合、「あまり健康ではない」群が 男性1.61倍(95%CI:1.17-2.23)、女性1.36 倍(0.94-1.96)、「健康ではない」群が男性2.90倍(2.04-4.11)、女性2.19倍(1.27-3.27)であった。多変量調整後、若干ハザード比は低下したが、男性では「あまり健康ではない」「健康ではない」群のリスクが、女性では「健康ではない」群のリスクが有意に高くなった。がん死亡に対しては、男性のみ「健康ではない」群の多変量調整済みハザード比は3.10倍まで有意に上昇した。また、循環器疾患死亡に対しては、年齢調整済みのハザード比は「健康ではない」群で男女とも有意に上昇したが、多変量調整後は関連を認めなかった。
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