高齢者のQOL改善のための大きな要素は「寝たきり防止」である。高齢者において脳卒中は寝たきりの原因の第1位であり脳卒中予防は重要な課題である。頭部MRI検査で発見される無症候性脳梗塞(かくれ脳梗塞)の頻度は高齢化社会の到来とともに高くなるが、近年無症候性微小脳出血(かくれ脳出血、cerebral micro bleed=CMB)の描出も可能になった。CMBは脳出血のみならず脳梗塞の病態とも関連している可能性があり、高齢者の脳卒中の発症予防のためにCMBと関連するどのような因子に注意を払う必要があるかを明らかにすることは有意義である。 平成21年度の研究ではCMBの描出とともに、同症例において大腿筋肉量の測定、骨密度量の測定、重心動揺検査を施行した。これらの収集した各指標を用い以下の観点から横断的な検討を行った。 ・ 微小脳出血と既知の脳卒中リスクファクターとの相関 ・ 微小脳出血と脳動脈瘤との相関 ・ 微小脳出血と相対的大腿筋肉量との相関 ・ 微小脳出血と認知機能の相関 ・ 微小脳出血とメタボリックシンドロームとの相関本研究によりCMBの有無・部位と脳血管障害あるいはそのほかの認知機能に関与する血管病変、CMBと脳卒中危険因子、メタボリックシンドローム、脳動脈瘤、転倒しやすさなどとの相関が明らかとなり以下のような医学的意義を証明した。 (1) CMBが深部およびテント下に存在する場合、高血圧性臓器障害の進行があるとみなし、抗血小板療法は慎重にし、降圧療法をより厳格に行う必要があると診断する。 (2) CMBの数および部位と転倒しやすさには明らかな関連はなかった 上記により高齢化社会の到来と共に飛躍的に増加している医療経済の是正に貢献できる。
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