研究概要 |
1.2002年に福岡県久山町健診受診者を対象に、心血管病(脳卒中と虚血性心疾患)の発症、死亡を追跡した。予後調査は以下の方法でおこなった。予後調査の際には、医師が本人または家族に説明し、同意文書に署名を頂いて調査の同意を得た。 (1)対象者を健診し、循環器疾患の罹患が疑われる者を抽出した。 (2)健診未受診者全員にアンケートを送り、循環器疾患の罹患の有無を調査した。 (3)久山町研究の追跡ネットワークを用いて、循環器疾患の罹患をモニターした。 (4)循環器疾患の罹患が疑われる者については、往診し、病歴・診察所見・検査所見など臨床情報を収集した。 (5)死亡例については、臨床情報を収集し、病理解剖の承諾を得るように努めた。 (6)解剖承諾例については、九州大学大学院病理学教室で解剖し、死因および臓器病変を調査した。 (7)定期的に研究スタッフの会議を開き、循環器疾患罹患および死因の最終診断を討議し決定した。 2.追跡調査の一環として、平成23年に生活習慣病予防健診を行った。健診項目は以下の項目である。 問診、身体計測(身長、体重、体脂肪)、血圧測定、医師による診察、検尿、血計、血液生化学、Hb_<Alc>心電図、眼底、食事調査。 3.2002年健診受診者を対象とした追跡調査の成績をもとに、上腕足首脈波伝播速度(baPWV)と心血管病発症との関係を検討した。 2002年に40歳以上の住民3,298名がbaPWVを含む健診を受診した。心血管病の既往者を除外し、baPWVが解析可能な2,916名について、baPWVレベルと心血管病発症との関係を検討した。その結果、baPWVレベルの上昇にともない、心血管病の発症率が有意に上昇した。この関係は交絡因子を調節しても変わらなかった。また、既知の心血管病危険因子のみで作成した心血管病発症のリスクモデルにbaPWVを加えると、心血管病発症の予測能が有意に改善した。日本人一般住民において、baPWVは心血管病発症の予測因子となる。
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