研究概要 |
本研究の対象は、1998年時点で長崎市内の同一住所に5年以上住んでいた原爆被爆者のうち、1998年から2007年までに5回以上原爆被爆者検診を受診していた21,815名(男7,954名、女13,861名)である。解析で採用した統計モデルは、目的変数が連続量である場合が重回帰モデル、目的変数が二値変量である場合がロジスティック回帰モデルである。目的変数は、1998年から2007年までの検診成績(赤血球数、白血球数、血色素量、血圧、GOT、GPT、ALP、ZTT)の個人別の平均値と経年変化および平均値に基づく異常の有無、問診で比較的愁訴が多い8項目における愁訴の有無である。説明変数は、性別、年齢、被爆距離、喫煙の有無、飲酒の有無、最寄りの内科医院までの距離、最寄りの外科医院までの距離、バス停または電停までの距離、市場(ショッピングセンター)までの距離、大気中のNOx(窒素酸化物)およびSPM(浮遊粒子状物質)の年間平均値である。 喫煙と飲酒は多くの検査値と関連していたが、環境要因のうち地理的要因では内科医院までの距離が遠いほど赤血球数の平均値が低く、肝機能検査値の平均値が高くなる傾向が観察された。大気汚染に関する測定値では、SPMの平均値が高いほど、赤血球数の平均値が低く、収縮期血圧とGOTの平均値が高くなる傾向が観察された。 最寄りの内科医院までの距離が近いほど検査値の平均値が好ましい傾向にあることが示唆されたが、理由の一つとして、距離が近いほど受診しやすく異常を早期に発見でき指導や治療が行われていることが考えられる
|