救急疾患は、発症後、速やかに適切な治療を開始することが、生命予後の改善、後遺症の緩和につながる。その為には、適切な治療を速やかに開始できるシステムを地域で構築することが必要であるが、未だ、そう言ったシステムの構築は不十分なままである。救急疾患の中でも特に脳梗塞は、発症後、速やかに専門医療機関で治療を開始することが、後遺症予防の観点から非常に重要である。本研究では、119番受信時の情報から、患者が脳卒中を発症している可能性を、確率的に表すことを目的とする。脳卒中の可能性を119番受信段階で把握することにより、速やかな病院搬送、速やかな治療開始に繋がると考えている。 平成21年度において、119番通報時点において脳卒中発生を識別するためのアルゴリズムとして、ベイズ定理を用いた手法とロジスティック回帰モデルを用いた手法の両方を検討し、アルゴリズムの原形を作成した。これらの作業には、平成20年から横浜市にて始まったコール・トリアージにより集積されたデータを用いている。2つの異なった手法による識別の精度を実際のデータを用いて検証するため、横浜市内の3つの医療機関に、救急車にて搬送された患者について、確定診断が何であったか調査を行ってもらうことにした。平成22年度は、協力医療機関においてデータを集積してもらうことになる。 医療機関の協力により、救急患者の病院搬送後のデータも得ることができることになったことで、119番受信時のデータ、救急隊が現場で取得したデータ、病院搬送後のデータの三者が突合できることになった。このことは、本研究を高いレベルで推進することを可能にするものである。
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