本研究の目的は、関節リウマチ患者とその主治医を対象として、良好な医師-患者関係の構築に必要な要因を、質的研究と疫学的研究手法を用いて多方面から評価・分析し、日本人のエビデンスに基づく医療コミュニケーションモデルを提案することである。限られた診療時間の中で、患者・医師双方に満足度の高い医療を実現するための、コミュニケーションスキル・トレーニングツールの開発をめざす。 平成22年度は本研究の2年目にあたる。まずRA患者の現状を評価するため、2003年に行った関節リウマチ患者のQOL向上に関する調査参加者に対して郵送法で自記式質問紙による再調査を行った。前回の調査参加者321名中、7年後も名大付属病院を継続受診中の患者は103名あった。臨床データと連結し、前回調査時との比較を行ったところ、RA以外の疾患の有病率は有意に上昇していたが、臨床検査データはいずれも顕著に改善し、生物学的製剤治療を受けている患者群はそうでない群に比べ有意に検査データの改善度が高かった。 再調査参加者に協力を呼びかけ、2010年7-8月と11月に計4回、フォーカスグループインタビューを行った。生物学的製剤治療を受けている患者は顕著な治療効果の差を感じており、「リウマチだけどリウマチではなくなった」と語る患者もあった。一方、多くの患者が診断直後はRAであることを受け入れられず苦悩することや、治療に関する情報について、医師の話だけでは十分理解できず、患者仲間やインターネット、新聞・雑誌を通し、個々の患者が自分のニーズにあった情報を得ようと努力していることが分かった。また、多くの患者が医師と良好なコミュニケーションを取るために、予め聞きたいことをリストアップするなど工夫していた。
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