研究概要 |
最終年度にあたる2011年度は,2010年度に行った内科・総合診療科初診外来診療場面を対象とした調査の結果について,1.医師,患者のコミュニケーションと医師および患者のジェンダーとの関係,2.医師,患者のコミュニケーションと患者満足度との関係に医師および患者のジェンダーが与える影響,の2点から検討し,まとめた. 1.女性医師は男性医師より,患者とより等しい量話し,患者への指示が少なかった.患者からは男性医師より多くの挨拶を受け,特に女性患者から不安,心配などの感情をより多く引き出していた.一方,女性患者は男性患者より医学的状態・治療方法についての質問を多く行ったが,医師から受けた医学的状態・治療方法についての質問は男性患者より少なかった,ジェンダー組み合わせでは,女性医師-男性患者ペアは女性医師の側が発話を控えるより緊張感の高い会話であり,男性医師-女性患者ペアは医師,患者の力関係の差が顕著にみられる会話である傾向が伺えた.以上の結果は,現在国際雑誌"Patient Education and Counseling"に投稿中である. 2.女性同士のペアでは医師の肯定的雰囲気をつくる発話や感情表出の発話が患者満足度とプラスの関係にあったが,その他のペアではマイナスの関係が見られた.男性同士のペアでは医学状態や治療方法に関する質問および生活習慣・社会心理的なことに関する質問,男性医師-女性患者ペアでは指示・方向付けの発話,女性医師-男性患者ペアでは生活習慣・社会心理的なことに関する情報提供が多いと患者満足度が低下した.以上の結果は,2012年9月に開かれる国際学会"International Conference on Communication in Healthcare"(St.Andrews, Scotland, UK)でのポスター発表が予定されており,その後国際学会誌に投稿する予定である.
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