最近、マスコミを通じて病院内の医療事故が報告され、医師の長時間勤務や夜勤による睡眠障害(睡眠時間の減少、ストレスによる不眠症、睡眠リズムの変化等)と医療事故との関係が危惧されている。しかしながら、わが国では医師の長時間勤務、夜勤と睡眠障害、医療事故との関連性についての大規模疫学調査はまだ実施されていなかった。今後、わが国の医師における睡眠障害や医療事故の防止のためにも、その実態把握を行い、(1)睡眠障害と医療事故の関連性、(2)勤務体制(開業医と病院勤務)と睡眠障害、医療事故との関連性、(3)仮眠の睡眠障害に対する効果、等について分析し、医師が医療事故に少しでも悩むことなく医療活動に推進するような対策を講じる必要性がある。そこで、今般医師を対象にした郵送法によるアンケート調査を実施し、(1)わが国の医師における睡眠障害の実態把握、(2)医療事故、長時間勤務、夜勤および睡眠障害との関連性、(3)その対策の考察を目的にした研究を実施することを計画した。 21年度に日本医師会員約16万人のリストから層別に(地域、年齢)ランダムに5000人サンプリングし、郵送法によるアンケート調査を実施した。対象者に自記式調査票((1)性、年齢、診療科目、勤務状況、喫煙飲酒等の生活習慣(2)ヒヤリハット、医療ミスの経験の有無、(3)睡眠状況項目、(4)精神的健康度からなる調査票)、対象者の住所氏名が記入されている返信用封筒及び日本医師会会長からの調査協力依頼状の3点を郵送した。対象者は記入した調査票を無記名のまま、返信用封筒に入れ密封し、日本医師会に返送してもらった。日本医師会では一人の調査担当者だけが返送された封筒を開け、調査票を取り出し、日本大学医学部公衆衛生学分野にそれらをまとめて手渡してもらった。なお、このような手順を取ろうとする理由は対象者のプライバシーを保護するためである。また、日本大学医学部卒業生を対象にした郵送法による同様な調査を実施した。22年度はこの2つの調査結果を解析し、医師を勤務形態ごとに分類し、夜勤の有無、夜勤の回数、勤務時間、睡眠障害状況、精神的健康度等を比較検討するものである
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