Hericobacter pylori(H.pylori)の幼少児期における初感染時期ならびに感染経路を明らかにするために、無作為に抽出した幼稚園・保育園の園児(3-6歳)をコホート対象とし、3年間の追跡調査を行っている。3年目も新潟市内の3つの幼稚園・保育園に通う園児とその母親のH.pylori感染率を検討した。結果は以下のとおりである。1.検体は園児258名、その母親(243名)から採取した。1H.pyloriDNAの検出は前回と同様にQIA amp DNA Mini kitでDNAを抽出した後、real time PCRを用いて行った。2.園児のH.pyloriDNA感染率は3歳未満の園児で0%(0/14)、3歳児で6.7%(2/30)、4歳児で52%(5/96)、5歳児で8.4%(8/95)、6歳児で8.7%(2/23)であった。昨年までと異なり年齢とともに上昇する傾向はみられず、昨年みられた4歳児と5歳児の間での陽性率の差もみられなかった。一方、園児の母親のH.pylori感染率は、20歳代で0%(0/5)、30歳代で8.7%(15/173)、40歳代で4.6%(3/65)であり、昨年に比し各年代で低率であった。さらに、丑卿ガDNAが陽性であった園児17名中母親も陽性であったものは4名(23.5%)と少なく、父親が陽性であったものが5名(29.4%)で昨年より高率であった。また、両親のどちらかが陽性であったものが8名(47.1%)であった。「研究の意義ならびに重要性」今年度は3歳児未満に感染者はいなかったが、昨年までの結果から3歳ですでにH.pylori感染児が認められたことは、生後早い時期での感染を示すものである。加えて、幼児の感染者の約半数の両親にH.pylori感染が認められている事実は家族内感染の可能性を強く示唆するものである。今後はさらに長期的なコホートの観察から家族内感染の実態を明らかにするとともに、口腔衛生の重要性を啓蒙し、園児ならびに両親の口腔衛生の向上がH.pylori感染を減少させうるか否かについて研究を続けていきたい。
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