花卉の残留農薬については、前年度までに輸入花卉を中心とした調査検討を行い、いくつかの農薬が検出された物の、国内産花卉についての情報は乏しい。また花卉から放散される農薬の呼吸器経由の暴露リスクについてはきわめて低いことが確認されたが、農薬の経皮曝露については、農業従業者における散布農薬の直接曝露について研究報告例は多数あるが、花卉栽培過程における農業従事者への経皮暴露の観点からの研究報告例はないのが現状である。そこで本研究では、国内産花卉に残留する農薬の調査および農業従事者が農薬の残留した花卉に接触した際を想定して、農薬の経皮曝露量の推定及び曝露リスク評価を行った。 市販の国産花卉からフェニトロチオン、フェンバレレート及びマラチオンが検出されたが、いずれの試料においても定量下限値付近の低い値であった。 また、農薬の経皮曝露実験において、検討した全ての農薬製剤において経皮暴露を確認できた。経皮曝露量はカルバリルが最大の16μg/unitであり、次いでクロロタロニルが10μg/unit及びフェニトロチオンが5.7μg/unitという順に高い値であった。この曝露量に基づく曝露リスク評価の結果、一部の農薬において曝露リスクの存在を示唆する結果が得られたが、今回のリスク評価はワーストシナリオに基づく評価であり、農薬散布直後の花卉に対して素手で作業する条件を想定しているため、今後より現実的な条件でのリスク評価を行う必要がある。
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