研究課題
本研究は、国内でも特にE型肝炎患者の発生報告が多いとされる北海道において、新規の高感度検出法を確立し、ウイルスの保有状況・動態調査を行うこと、さらにその結果から本疾患の原因ウイルスの循環様式を明らかにし、予防対策に関わる情報を蓄積することを目的とする。現在報告されている検出法ではウイルス検出が可能な期間は短く、患者においても発症から2週間前後とされている。また、食中毒が疑われる場合、食品や調理場などの環境中のウイルス量はごく微量であるため、感染源、感染経路の解明が困難であり、高感度の検出法が求められている。平成22年度は、微量のE型肝炎ウイルスを高感度に検出・型別する方法の改良と、対象検体の収集及びRT-PCR法によるスクリーニングを行った。1.E型肝炎ウイルス遺伝子の高度に配列の保存された領域に、検出、型別用のプライマーとTaqManMGBプローブを21年度に設計した。データベース上の多数のG1~4型HEV株の配列について、型別可能か理論上の検索を行ったところ、ミスマッチが見られたので改変した。2.E型肝炎は人獣共通感染症であり、人への感染については、加熱不十分な感染動物(ブタ、イノシシ、シカなど)の肉や内臓の喫食が原因として疑われる。E型肝炎患者などからの検体や感染源と目される食品、環境などの検体を収集し、保有状況・動態スクリーニングを進めた。E型肝炎として届けられたヒト体41株をRT-PCRにより解析したところ、25株はG4、16株はG3に分類された。ブタ肝臓390検体中4検体においてHEVを検出した。エゾシカ肝臓47検体は陰性であった。下水、河川水、海水、調査用に設置したカキなどの環境検体調査(継続中)において、下水2検体と海水1検体からHEVを検出した。
すべて 2010
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Japanese Journal of Infectious Disease
巻: 63(3) ページ: 216-217