平成24年度は、研究代表者らが開発したFI-J(Frailty Index for Japanese elderly)を使用し、介護予防健診を受診した高齢者を対象として「虚弱」の予知因子を調べた。高齢者の「虚弱」は将来的に医療・介護費用を増大させることは既に示されている(吉田裕人(2010)「高齢者の医療・介護における経済的側面からの研究の今後」『老年医学会雑誌』47(6):505-510)。本研究課題である群馬県草津町の介護予防推進システムの経済的側面からの評価では、介護予防の中核である介護予防健診の評価は必須であり、健診受診者という比較的健康度が高い高齢者においても「虚弱」の予知因子を把握し、それを予防することで将来の医療・介護費用の抑制が期待できる。群馬県草津町において2005 年に実施された介護予防健診(70歳以上の住民対象)受診者でFI-Jにより「虚弱」なしと判定されたのは 357 名であったが、このうち2007 年に同町において実施された同健診もしくは健診未受診者調査でFI-J に応答した334 名を研究対象とし、2007 年の虚弱の有無別に2005 年の対象者の特徴から「虚弱」の予知因子を調べた。統計学的方法は、2007年の「虚弱」の有無を目的変数、「虚弱」の発生と関連のあった2005 年の項目を独立変数としたロジスティック回帰分析を用いた。性、年齢は強制投入し、ステップワイズ法によってロジスティック回帰分析を行った結果、高血圧既往の有無、握力、アルブミンが「虚弱」の発生の予測を有意に説明する因子として検出された。それぞれの「虚弱」の発生なしに比べた「虚弱」の発生ありの調整済みOdd 比は、順に(「なし」に比べて「あり」が)2.55、(1kg減少するごとに)1.08、(0.1g/dl減少するごとに)1.22であった。
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