本研究の目的はほぼ同時期(1990-2005年を中心)に実施された2つのコホート研究(日本の代表集団を対象としたNIPPON DATA90と日本で唯一、都市部で実施されている吹田研究)を用いて、死亡率、主要危険因子のリスクなどを比較、考察することである。本年度は主に心筋梗塞または脳卒中の既往のない者を対象に各指標の比較を行った。NIPPON DATA90と吹田研究におけるベースライン特性は、平均年齢はそれぞれ52.4、54.9歳、男性の割合は41.3、47.8%、平均BMIは22.9、22.4kg/m^2、高血圧(血圧≧140/90mmHg又は治療中)の有病率は45.5、32.1%、高コレステロール血症(総コレステロール≧220mg/dl又は治療中)の有病率は32.3、354%、低HDLコレステロール(HDLコレステロール≦40mg/dl)の有病率は16.4、16.5%、糖尿病(空腹時血糖≧126mg/dl又は随時血糖≧200mg/dl又は治療中)の有病率は3.7、4.8%、現在喫煙率は28.7、31.2%、現在飲酒率は28.3、52.7%であった。また、追跡期間はそれぞれ13.7年、14.1年で、各コホートの全期間における1万人年当たりの粗死亡率は、総死亡で110.9人、117.9人、循環器疾患死亡で31.1人、26.7人、虚血性心疾患死亡で6.3人、8.9人、脳卒中死亡で13.1人、7.9人、悪性新生物死亡で41.7人、49.0人で、吹田研究と比べ、NIPPON DATA90では脳卒中死亡率が高い傾向があり、虚血性心疾患死亡率は低い傾向であった。ベースラインで吹田研究の平均年齢が高いにも関わらず、高血圧有病率はNIPPON DATA90で非常に高く、この高血圧有病率の差がコホート間における循環器疾患の疾病構造の違いに関連している可能性が考えられる。
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