研究概要 |
本研究の目的はほぼ同時期(1990-2006年)に実施された2つのコホート研究(日本の代表集団を対象としたNIPPONDATA90(以下ND90)と日本で唯一、都市部で実施されている吹田研究(以下SC))を比較、考察し、今後の公衆衛生対策に資することである。心筋梗塞、脳卒中の既往のない者を対象に死亡率を計算すると、ND90とSC、それぞれにおける時期別(1990-1995年、1996-2000年、2001-2006年)の年齢調整死亡率(/1万人年)(昭和60年モデル人口使用)は、循環器疾患死亡でND90:19.8,23.4,20.8、SC:12.6,16.8,15.8、虚血性心疾患死亡でND90:4.6,4.1,4.4、SC:3.5,6.3,4.5、脳卒中死亡でND90:8.4,9.7,8.8、SC:3-5,3.9,6.5で、ND90に比べ、SCでは虚血性心疾患や脳卒中が増加傾向であった。また、年齢階級別では70歳代以上で、ND90では虚血性心疾患の時期別粗死亡率は25.0,21.1,26.1と大きく変化していないが、SCでは16.2,38.7,33.0と増加傾向であり、脳卒中死亡の時期別粗死亡率はND90では45.5,56.7,64.5、SCでは20.9,25.8,36.1で、SCで死亡率は低いが、いずれのコホートでも増加していた。以上より都市部における循環器疾患死亡の動向は日本全体と異なっている可能性がある。都市部の人口は、大都市をもつ都府県(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡)に限っても、総人口のおよそ3分の1をしめており、生活習慣の欧米化の進みつつある日本においてその影響は大きく、今後都市部の疾病構造の予測においては都市部の人口構成を考慮する必要があると考える。
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