研究課題
これまでに、DNase Iは、従来の心筋梗塞(AMI)確定診断に活用されているtroponin T(TnT)やCK-MBに比べ、心筋梗塞発症後早期に上昇するため、早期診断のための血液生化学診断マーカーになりうる事や、AMI発症後左室リモデリングに伴う左室肥大の予測マーカーにも活用出来る事を見出した。既に、従来の酵素活性測定法に代わり、迅速簡便なサンドイッチELISA法を開発し、酵素活性と同様、蛋白量も一過性の上昇が認められることから、酵素活性レベルの変動は、酵素量の変動に起因する事を確認した。血清DNase I活性上昇に基づくAMIの特異的診断方法を確立する基盤として、活性上昇の機構の解明を続行した。DNaseI活性を惹起する物質の検索や培養条件を検討したが、低酸素暴露のように活性の上昇を誘導するものは認められなかった。また、QGP-1細胞以外でDNase Iを発現する細胞は見出されなかった。これまで、DNase I酵素活性の上昇は、低酸素暴露によりDNASE1遺伝子の転写が増強され、その転写調節には転写因子Splが関係していることや、PI3K-AktやMAPKのシグナル伝達系路が関与している可能性が示唆されたが、更に詳細な転写活性のメカニズムについては、検討中である。また、法医領域では、解剖時に病理学的な心筋の梗塞所見が無い場合、心筋梗塞死の鑑別診断が困難な場合が多く、我々が開発したELISA法により、血清中のDNase I酵素活性を測定しており、鑑別診断への応用を検討している。DNase酵素は、AMI以外にも、自己免疫疾患発症への関与が注目されており、DNase I family中のDNase I-like3(DNase Il3)非同義置換型SNPについて調べたところ、塑86アレルの遺伝子産物は酵素活性が極めて低いDNase Il3酵素を産生することを明らかにし、自己免疫疾患の危険因子になりうることが示唆された。我々は以前、DNase I遺伝子Gln222Arg多型における対立遺伝子DNASE1*2が心筋梗塞発症の遺伝的危険因子である事を確認しており、今後はAMIの疾患感受性遺伝因子としてのDNase I遺伝子の関与についても検討を進めてゆきたい。
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