研究概要 |
覚醒剤および身体拘束の突然死との関連について、細胞間の電気的および情報連連絡経路となるGap Junctionについて検討を行った。Cx(Connexin)遺伝子のうち、心臓において発現が報告されているCx37,Cx40,Cx43,Cx45の4遺伝子についてReal time PCRを用いて遺伝子発現定量を行い、二元配置分散分析により検定した。その結果、Cx37は覚醒剤投与により、Cx45は身体拘束により有意に低下した。また、Cx40は身体拘束により低下傾向を、Cx43は覚醒剤投与に身体拘束が加わると増加傾向を示した。覚醒剤投与により発現低下を示したCx37は血管内皮に分布し、高血圧、動脈硬化、糖尿病などの血管内皮障害時に発現を低下することが報告されている。さらに、覚醒剤投与により血清中のIL-1,IL-6,TNF-a等の炎症性サイトカインが増加するという報告もある。これらの報告から、覚醒剤投与により炎症性サイトカインが生成され、心筋傷害が生じている可能性が考えられた。また、元来turnoverの速いGap Junctionにおいて、身体拘束ストレスによって洞房結節、房室結節に分布するCx45の発現低下が、房室伝導障害を惹起し、致死性不整脈の発生要因となっている可能性が考えられた。本結果から、覚醒剤投与に身体拘束が加わると相加・相乗的に心臓に影響する可能性が示された。つまり、覚醒剤投与が心筋障害を惹起し、さらに身体拘束が刺激伝導系に作用し循環動態に影響を与えることが考えられた。これらの所見から、覚醒剤に身体拘束ストレスが加わった際の突然死メカニズムの解明につながるものと期待される。
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