研究課題
亜ヒ酸(三酸化ヒ素:ATO)は毒性元素として知られる一方、抗が剤として用いられ、難治性・抵抗性急性前骨髄球姓白血病(APL)患者に有効であることが報告されている。しかしながら、小児例におけるATO投与後の血中および尿中ヒ素化合物濃度等の知見はほとんど無い。そこでATO投与後の小児己APL患者におけるヒ素代謝を明らかにうるため、尿中ヒ素化合物を分祈し、毒性影響を調べる手がかりとして、酸化ストレスのマーカーとして知られる8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG)濃度の分析を行った。寛解導入療法期間中血清中総ヒ素濃度は0.002-0.156ug/gと極めて低く、血清中のいずれのヒ素化合物も今回の測定方法では検出されなかった。一方尿中総ヒ素濃度は18-2120ng/mg creatinineであり、投与尿中arsenite(As^<III>):67-675;arsenate(As^v):34-642;monomethylarsonic acid (MMA):89-233;dimethylarsinic acid (DMA):193-565(ng/mg creatinine)の範囲で検出された。尿中DMAの割合が最も高く、23-69%であった。また尿中As^<III>の割合は5-47%と成人例に比較して高かった。8-OHdGは活性酸素種によるDNAダメージにより生じる。尿中8-OHdG濃度は0.8-34ng/mg creatinine(健常人:15ng/mg creatinine)の範囲を示し、尿中DMA濃度と正の相関関係が認められた。血清8-OHdG濃度は、2.2-5.8ng/mgと低値であり、投与期間中ほぼ一定の値を示した。ATOを投与された小児患者の尿および血清において8-OHdGと各ヒ素化合物濃度との関係を調べたのは、本研究が初めてである。小児患者では、As^<III>の割合が高く、成人に比較してヒ素の多代謝能が低い可能性が示唆された。
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