研究概要 |
マウスの下大静脈結紮による深部静脈血栓塞栓症モデルの作成法を確立し,モデルから採取した下大静脈のパラフィン包埋切片について,各種病理組織学的染色を行い,血栓の陳旧度に伴う組織学的変化を明らかにした.また好中球,マクロファージ,それぞれに対する特異的抗体を用いた免疫染色を行い,各分子の局在を検索するとともに,画像解析を行い,各分子についての半定量的評価を行った.好中球数/マクロファージ数(N/M)比は,下大静脈結紮後1日目では4.0以上,5日目では1.1±0.1,7日目以降では1.0未満であった.N/M比が2.0以上では3日以内,1.0未満では5日以上経過した血栓であると推定できることが示唆され,剖検例においても血栓の陳旧度判定の有用な指標となると考えられた.また血栓内に出現するmyofibroblastや,新生血管を免疫染色により検出し,これらと血栓陳旧度との関連性を明らかにした.血栓内に新生血管やmyofibroblastが認められる場合は,7日以上経過した血栓であると推定できることが示唆された.また下大静脈から採取した血栓において,サイトカイン・ケモカイン(MIP-1α, MIP-2, RANTES, MCP-1, TGF-β, IFN-γ, IL-6, TNF-α等),凝固・線溶系に関連する因子(uPA, tPA, PAI-1, MMP-2, MMP-9等)の遺伝子発現量を半定量した.また遺伝子発現レベルの解析精度及び再現性の向上を図るため,リアルタイムPCRを用いた定量的PCRによる解析方法についても検討した.以上の結果より,下大静脈内の血栓の大きさや溶解速度には,IFN-γやIL-6等が影響を及ぼしていることが推測され,さらに本研究の血栓治療法への応用が期待されるものである.
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