研究概要 |
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome : SAS)は上気道閉塞を伴い,病態に間歌的低酸素・高炭酸血症,交感神経系過緊張及びRenin-Angiotensin System(RAS)活性化による酸化ストレスが関与していると考えられている.本研究の目的は,SAS患者における酸化ストレスの発生機序,病態への関与の分子機構の解明である.虎ノ門病院の睡眠センターでSAS患者と診断された30歳代から70歳代のヒトの血清約50検体,対照として,年齢・性別等を合わせた健康診断の被験者血清を用い,(研究は生命倫理委員会で承認され,検体はインフォームドコンセントを得て採取された.)酸化ストレスマーカーである4-hydroxynonenal(HNE)とニトロチロシン(NT)を,私達の開発した時間分解蛍光イムノアッセイで測定した.血中のHNE値は,SAS患者は,どの年代においても健常者より高かった.NT値は30歳代では,SAS患者が健常者より低い傾向を示したが,有意ではなかった.他の年代では,SASと健常者に差を認めなかったが,個体差が大きかった.また,SAS患者は就寝前と比べて,起床時の酸化ストレスマーカー値が高値を示すことがわかった.予想に反して,持続気道陽圧療法(CPAP)1週間後,酸化ストレスマーカーが高値を示した.これは,負担の大きいCPAPによる精神的ストレスの影響と考えられた.
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