研究概要 |
睡眠時無呼吸症候群(SAS)のモデルとして,SD雄ラット(7週齢)を1・4・6週,1日8時間間歇的低酸素(4%O_2)に90秒,常酸素(21%O_2)に90秒曝露(lntermittent Hypoxia, IH)し,酸化ストレスマーカー(HNE, NT),血液ガス,心拍数,血圧,心機能,心肥大について評価した.心臓は,右室(R),左室+心室中隔(L+S)に分離した. 1) 6週のIH群は低酸素暴露によりPaO_225.43torr、PaCO_217.80torrと有意に低下し,pH7.58と上昇した.収縮期血圧はIHの方が高くなっている(114.89±9.89vs126.67±7.76p<0.05)が,拡張期血圧に対照群とIH群で変化は見られない(93.3±7.78vs97.44±2.40p=0.23).心拍数は対照群に対してIH群の方が高かった(367.74±41.2vs411.67±25.18p<0.05).間歇的かつ長期にわたる低酸素血症は,心拍数と収縮期血圧の持続高値を惹起することが分かった. 2) 酸化ストレスマーカーであるHNEとNT値は4週以降増加する傾向が見られた.特に4週では,対照およびIHについて,L+Sについて有意差は見られないがRについてはIH群の値が大きくなっていることが分かった.このことから酸化ストレスは右室に大きく影響していると言える. 3) 反復性の低酸素血症は心肥大を生じることが分かった(心臓/体重比0.24±0.01vs0.28±0.01p<0.01).右室優位な両室肥大と考えられる(R/L+S0.25±0.02vs0.31±0.00p<0.01).以上のことからSASは心拍数・収縮期血圧の高値を惹起すること,右室優位の両室肥大を生じること,心エコーにて心収縮能に変化がなかったこと(EF89.96±3.74vs89.00±3.64p=0.33)から代償性に心機能が維持されていると考えられる.6週ラットでの結果で収縮期血圧が上がっているのになぜ左心には影響が出なかったのか,その心機能の代償性について研究をする必要がある.その背景には右室と左室の組織の違いについても考慮する必要があると考えられる.また,外的変化は6週以降で出ると言われているが,酸化ストレスマーカーの値の変化は4週で見られたことからSASの早期発見に応用できるかもしれないと考えられる.
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