研究概要 |
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome,SAS)は、心肥大、心不全、全身・肺高血圧等より突前死と関連する。私達は、独自に開発した高感度の時間分解蛍光測定法を用いて、SAS患者の血清の酸化ストレスマーカー(4-hydroxynonenal,HNE:Nitrotyrosine,NT)が、特に、朝、上昇していることを見出した。SASの研究のため、ラット等を間歇的低酸素曝露(Intermittent Hypoxia,IH)に暴露するモデルが用いられてきたが、小容器に1匹ずつ動物を閉じ込めるストレスと、窒素ガスボンベの頻回の交換を要することから、経費・手間がかかり、実験効率が悪く、研究が進まなかった。私達は、飼育箱に工夫を凝らし、窒素ガス発生装置を用いた"IH動物作製装置"を開発したことで、多数のラットを低経費・労力で再現性よく、肺高血圧、右心肥大を再現できるようになった。このモデルにおいて、血中HNE,NTの上昇を確認した。また、IH暴露によって、心臓にオートファジー(二重膜により細胞質小領域・オルガネラを取込み、リソソームと癒合・分解する現象)が誘導されることを見出した。オートファジー阻害剤の存在下、3週までに再現よく心不全が誘導された。この心臓を分析すると、IH暴露により、より高分子のHNE修飾蛋白が増加していることが分かった。また、ubiquitin(Ub)化蛋白が、IHにより、右心室で左心室より強く発現しており、オートファジー阻害剤により、増加することを見出した。HNE,Ubにより修飾された蛋白は凝集体をつくりやすく、オートファジーにより処理できない場合、細胞・臓器障害を惹起する。また、可溶性より凝集したHNE・Ub修飾蛋白が、より強く収縮不全や細胞死を惹起することから、IHによる、HNE,Ub生成と蛋白修飾が心不全の要因と考えられた。IH暴露により、HNE・Ub修飾が増強される細胞、オルガネラを免疫組織法で同定するとともに、蛋白質をwestern blot法、質量分析によって、HNE・Ub修飾蛋白を同定しつつある。
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