研究概要 |
近年、ヒトと動物の共生社会は進み犯罪鑑識の現場で動物試料の遺留物が採取されるケースは増加傾向にあると言える。このような複雑・多様化した犯罪鑑識の現場において、学術的に裏付けられた動物試料の解析技術の開発は急務である。そこで我々は、ゲノムの解析情報を用いた人獣鑑別法あるいは動物の個体識別法など法医実務に応用可能な技術開発の基盤的研究を実施した。その結果、1)平成21年度は動物ゲノムの収集を行い、イヌ987例、ネコ200例、ニホンザル450例、イノシシ35例のDNA検体を新たに収集した。2)動物法医遺伝学的解析候補マーカーの一つであるイヌmtDNA HVI領域のハプロタイプの同定を4品種183例で実施し、既報の66ハプロタイプ(Himmelberger et.al.J Forensic Sci 2008)のうち13種類を検出した。同時に、同一品種内において複数の異なるハプロタイプが存在する事を明らかとした。3)イヌ体細胞ゲノムにおいては、市販の遺伝子型判定キットを用いることによりAHTK211,CXX279,REN169018,INUO55,REN54P11,INRA21,AHT137,REN169D01,AHTH260,AHTk253,INU005,INU030,FH2848,AHT121,FH2054,REN162C04,AHTh171,REN247M23など18の遺伝子座で2塩基から4塩基の型判定が可能であった。4)ヒト類似血液型に関する研究においては、イヌRH遺伝子exon5のSNP同定、イヌのABO式血液型類似遺伝子の発現を明らかにした(Chong et.al.J Comp Clin Med 2009a)。5)イヌの血液型DEAl. 1の血清学的解析により5品種80例の型判定を行い、陽性率は85%であることを明らかにした(Chong et.al.J Comp Clin Med 2009b)。研究課題推進のため、今後各研究データーを蓄積すると共に、さらに多角的な動物試料の解析を行う予定でいる。
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