研究概要 |
平成23年度は前年度、前々年度に引き続き、動物試料を対象とした法科学技術開発に関する基盤的研究を実施した。その結果、血液型研究においては、1)イヌにおけるヒトABO相同遺伝子解析を行い、これまでに報告されていない当該遺伝子の完全長cDNA配列(GenBank Ac,No.AB638847)およびエクソン-イントロン構造を明らかにした。血痕などからヒトの血液型を検査する際に影響を及ぼす事例として、イヌの血液の混入の報告があることから、今後これらの機序解明に役立つと期待される。2)イヌ特異的血液型責任遺伝子の探索はこれまでほとんど行われていないことから、新規DNA多型マーカー開発の一環として、イヌマイクロアレイ(385K-1plex,NimbleGen)による網羅的CGH解析を行いDNAコピー数のプロファイリングを実施した。その結果、2番染色体、5番染色体、9番染色体、23番染色体、27番染色体の特定領域において興味あるコーピー数変異が認められた。当該領域は今後、血液型との関連あるいは個体差などを解析するための重要な候補領域と考えられる。3)ヒトのDNA個体識別においては現在3から4塩基の短い繰り返し配列(STR)多型マーカーが主流であるが、近年よりSNPマーカーによるデータベースの作成などが行われ、法科学技術への応用研究が進んでいる。動物においては、個体識別法を目的とした動物ゲノム内SNPマーカー探索研究はほとんど無い。そこで、本研究では、個体識別に有効な候補SNPを探索するため、48献体のイヌゲノムを用い、約170000SNP(Canine HD, Illumina)の網羅的ゲノム解析を実施した。その結果、Sample Success Rate 100%,Locus Success Rate 99.0%,Call Rate99.0%のタイピング解析結果を得た。また、本解析群内でマイナーアレル頻度0.10以上のSNP座位は173662SNP中、106191座位(61.1%)で、全染色体に分布していた。以上の結果はSNP解析による同種個体識別マーカーを絞り込むために有用な知見と考えられる。
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