研究課題/領域番号 |
21590751
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
原 健二 福岡大学, 医学部, 講師 (00090738)
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研究分担者 |
久保 真一 福岡大学, 医学部, 教授 (10205122)
柏木 正之 福岡大学, 医学部, 助教 (70301687)
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キーワード | 焼死体血液の分析 / 生活反応のマーカー / 揮発性炭化水素 / ニトリル誘導体 / 熱分解物 / 法医病理所見 / ガスクロマトグラフィー / 質量分析法 |
研究概要 |
火災現場等で発見される焼死体が火災発生時に生存していたか、すなわち呼吸をしていたかを、火災発生時の高熱で物体が熱分解され発生する揮発性成分を焼死体の血液からガスクロマトグラフィー・質量分析法による分析で証明することが、本研究の目的である。その目的を達成するため、平成21年度に確立している血中の揮発性炭化水素の分析法により実務分析、また、有機溶媒抽出法を開発し、その方法により、実務試料中の揮発性炭化水素以外の分析を行い、焼死体の生活反応マーカー候補となる熱分解産物を探索した。実務分析に当たって、法医病理所見を参考にした。 1.揮発性炭化水素の分析:この分析では、主に助燃剤になる石油成分とカーペットなどの石油製品から熱分解で発生するフェニルアセチレン、スチレン、インデン、ナフタレンが検出された。法医病理で焼死の生活反応の特徴の所見が得られたものでは、ほとんどの剖検試料からフェニルアセチレン、スチレン、インデン、ナフタレンが検出された。しかし、法医病理では焼死の生活反応が認められない一例から、石油成分と熱分解産物が検出された。露出した部分から、これらの炭化水素が浸入することが示唆され、化学分析を評価するのに、法医病理所見が重要であることがわかり、これまで、石油成分が死体血から検出されれば、火災発生時に生存していたとされていた事に注意を与える所見が得られた。2.有機溶媒抽出を開発し、揮発性炭化水素以外の分析を検討した。実務分析した中に、上記の炭化水素が検出されなかった例で、ポリアクリロニトリルの熱分解産物と思われるニトリル誘導体を検出することができ、法医病理所見を補うことができた事例があった。1,2の結果から、揮発性炭化水素とニトリル誘導体の検出が、法医病理所見と一致すれば、焼死体の生活反応を示す有用なマーカーになることが予想される。平成23年度は、このことを明らかにする研究を行う。
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