研究概要 |
二酸化炭素(CO2)は呼吸中枢を刺激・抑制するが,心筋への影響あるいは不整脈発現がCO2の中毒症状あるいは中毒死へ関与することが指摘されている。今回,CO2中毒死と不整脈発現との関係について検討した。 方法:CO2と酸素の濃度を可変(窒素バランス)とした曝露装置内にラットあるいはマウスを静置した。四肢誘導心電図を断続的に記録した。同時にポリグラフで心電図II誘導および空気動圧センサーでとらえた呼吸運動などを連続記録し,心停止と呼吸停止を確認し致死時間とした。 結果:酸素を大気と同じ21%に固定すると,CO2濃度に応じて致死時間は短縮し,CO2 30%で致死時間は平均10時間以内となり,30%を超えると急激に短縮した。呼吸数はCO2 20%以下では促進されるが,30%以上では濃度に応じて急激に抑制された。心電図は低濃度では異常を認め難いが,CO2 20%以上では房室ブロックなどの不整脈の発現が高頻度に認められた。この不整脈は,迷走神経の亢進によって生じたものと考えられ,呼吸が高度に抑制された場合および呼吸停止前後に認められた。CO2濃度に応じて,呼吸停止時間は短縮するが,呼吸停止から心停止までの時間は逆に有意に延長した。CO2を含まない低酸素(12.6%)では,呼吸の促進と徐脈化が認められ,CO2中毒とは異なる所見であった。 考察・結論:CO2による不整脈はCO2 30%以上で高度の呼吸抑制状態でのみ発現した。今回のモデルにおいては,不整脈発現ではなく呼吸抑制がCO2中毒死の主体となると考えられた。
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