研究概要 |
これまでに,高濃度の二酸化炭素(CO2)そのものが諸臓器の血清生化学的な虚血性変化をもたらし,死直前に不整脈が発現することを確認した。本年度はCO2中毒での心臓の不整脈の発現の機序をさらに調べるために,カルシウムおよび過酸化物の影響について阻害剤などを用いて検討した。 方法:麻酔下ラットに下記の薬剤を吸入30分前に投与し,21%酸素/30%CO2(窒素バランス)ガス(以下「高濃度CO2ガス」という)を3時間吸入させた。四肢誘導心電図および空気動圧センサーでとらえた呼吸運動を連続的に記録した。カルシウム拮抗剤としてL型カルシウムチャンネルのN部位に結合し,血管拡張・降圧作用が強く心筋への作用がほとんどないジヒドロピリジン系のニカルジピンを用いた。過酸化物合成阻害剤として5-lipoxygenase阻害剤Diethylcarbamazine (DEC)を用いた。高濃度CO2ガス曝露後の血清CK-MBを心筋虚血の指標とし,血清LDH3を肺障害の指標として測定し,saline投与後に高濃度CO2ガスを曝露した対照群と比較した。 結果:ニカルジピン投与後に血圧は減少し,高濃度CO2ガス曝露によって対照群と同様の血圧上昇・呼吸抑制を生じ,血清CK-MBおよびLDH3も対照群と有意な差は認められず,不整脈発現も同様であった。DEC投与群では,高濃度CO2ガス曝露によって対照群と同様の血圧上昇・呼吸抑制,血清CK-MBおよび不整脈発現を認めたが,LDH3は対照群よりも低値であった。 考察・結論:今回のCO2中毒モデルの心臓の病態に,L型カルシウムチャンネルのN部位あるいは5-lipoxygenaseの関与は明らかではなく,肺障害に5-lipoxygenaseが関与する可能性が考えられた。
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