研究課題
漢方薬と灸治療の上腸間膜動脈血行動態に与える影響の検討28名の健常男性をランダムにA、Bの2群に分けた。A群は、ヘソを中心に直径10cmの範囲を温灸機で40度の温度で20分間温めた。B群は、50mlの蒸留水に溶いた大建中湯(ツムラ;TJ-100;5.0g)を内服した。さらに健常男性14名を対照群(C群)とした。C群は、50mlの蒸留水を内服した。超音波診断装置(アロカ社;prosound α10)を用いて、上腸間膜動脈の血行動態を測定した。測定は、温熱刺激ないしは内服の直前、温熱刺激ないしは内服の10、20、30、40、50分後に行った。上腸間膜動脈の血流量は、A群において、温熱刺激後10から40分後において温熱刺激前に比して有意に(p<0.05)増加した。B群においては、大建中湯の内服後10から50分後において、内服前に比して有意に(p<0.01)血流量が増加した。A群およびB群の間に上腸間膜動脈の血流量の有意な差は認められなかった。C群においては、上腸間膜動脈の血流量に有意な変化は認められなかった。当該研究において、温熱刺激も、漢方薬の内服も、ほぼ同じ時間経過で、上腸間膜動脈の血流量に対して同様の変化を惹起することが明らかとなった。伝統医学で腹部を温めるとされている治療方法は、消化管への血流量を増やしている可能性が示唆された。これは、鍼灸治療や漢方薬治療の生体への効果を示す、あたらしい視座を提供すると考えられる。
すべて 2010
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Forsch Komplementmed.
巻: 17 ページ: 195-201