研究課題
健常被験者を対象としたPET測定を、東北大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認を得て実施した。約10名の被験者を対象として、ヒスタミンH1受容体測定用薬剤である[^<11>C]doxepinを肘静脈から投与し、安静状態および暗算課題による精神的ストレス下の2条件でPET撮影を行なった。画像解析にあたっては、同一被験者の3D-MRI画像を収集し、重ね合わせを行ったMRI画像上で前頭葉、側頭葉、頭頂葉、帯状回などに関心領域を設定して評価を行った。脳内ヒスタミンH1受容体結合能の値を2条件間で比較して、ストレス負荷時の脳内ヒスタミン遊離量を推定した。PET撮影前後に実施した質問表の結果では、計算課題遂行中の被験者は緊張感と疲労感を十分に自覚していることが示されたが、PET測定の結果では2条件に明らかな受容体結合能の差はみられず、暗算課題による心理ストレスではPET画像で確認できるほどの変化は起こらない可能性があることが示唆された。過去の研究では、内臓痛を誘発するほどの強い消化管刺激によって脳内ヒスタミン遊離がPETで測定されたことが報告されているが、通常の心理ストレスでは脳内ヒスタミン遊離はそれほど多くなく測定感度以下となる可能性があることが示唆された。上記結果は日本核医学会等において平成22年度に発表予定である。上記の結果を受けて、2年目に予定していたカイロプラクティックおよび鍼灸の治療効果に関する脳血流・代謝測定研究を前倒しして開始した。現時点での予備的解析では、カイロプラクティック治療前後で痛みの主観的症状が有意に改善し、脳活動も自律神経機能に関連する領野の変化が観察されている。鍼灸治療前後の脳血流の変化も安定して測定することができた。このように代替医療治療効果の評価には、神経受容体レベルでの観察よりも脳血流・代謝レベルで観察するほうが測定感度が高いことが示唆された。
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