研究課題
頸部痛、肩こりがあるがそれ以外の目立った症状および他の疾患がない男性12名を対象として、ポジトロン断層法(PET)による脳および骨格筋代謝の測定を行った。測定用のトレーサーには、組織ブドウ糖代謝測定用薬剤であるフルオロデオキシグルコース(FDG)を用いて、代替医療のひとつであるカイロプラクティック施術後と無治療待機時の安静状態の2条件間で比較した。PET画像解析の結果、施術後の安静状態における脳糖代謝の変化が観察された。脳糖代謝亢進部位としては、前頭前野や帯状回などが観察され、脳糖代謝低下部位としては小脳虫部が観察された。同時に実施した主観的評価では、痛みの自覚が施術後に有意に軽減し、主観的ストレスの自覚も軽減していることが示され、脳における代謝変化が自律神経活動の変化と関連している可能性が示唆された.。また、治療の際に経皮的に機械的刺激をうける僧帽筋などの骨格筋の代謝も計測したが、治療後には糖代謝が低下する傾向があることが示された。また、長期間、伴侶動物を飼育している男女を対象として、伴侶動物と同伴する安静条件および単独で待機する安静状態を比較をFDG PETを用いて実施した。その結果、ふだん動物とともに生活している者では、伴侶動物と同伴する条件のほうが局所脳代謝が低くなる傾向があることが示された。研究全体としては、対象者が好ましいと感じる条件において、副交感神経優位の状態となり、それに伴って発生する脳局所糖代謝がFDG PETで計測できたものと考えられた。このようにPETを用いることによって、代替医療の治療効果を評価することも可能であると考えられる。上記の研究成果は、ヨーロッパ放射線医学会(ECR)にて発表した。
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