新たに開発した加圧負荷褥瘡モデルラット(側臥位固定で6時間の加圧負荷を4日間反復)を用いて、漢方薬の褥瘡治癒効果を調べたところ、漢方薬・帰耆建中湯(きぎけんちゅうとう)投与群は対照群に比べて、有意な褥瘡治癒効果を示した。 帰耆建中湯の褥瘡治癒促進効果の作用機序について検討するため、加圧負荷後3、7、14、35日目の加圧負荷部位の組織を病理組織学的、免疫組織学的に検討した。皮膚病理組織のHE染色標本、抗CD-31抗体、抗α-SMA抗体、抗VEGF抗体による免疫染色を行い、さらにWestern blot法を用い、炎症性サイトカイン(MCP-1、IL-1β、TNF-α)、血管新生促進因子(VEGF、PDGF)、細胞外マトリックス関連タンパク質(α-SMA、bFGF、TGF-β1、Collagen III、Collagen I)の発現量についての検討を行い、3群で比較検討した。 その結果、病理組織評価では、帰耆建中湯を投与した群において、血管内皮細胞の指標となる抗CD-31抗体による検討により、早期に新生血管の増加が明らかとなり、細胞外マトリックスの評価となる抗α-SMA陽性面積は早期に増加を示し後期には低下していた。また、帰耆建中湯を投与した群において、炎症性サイトカインであるMCP-1、IL-1β、TNF-αは早期に抑制され、血管新生に関与するPDGFは早期にVEGFは後期に増加し、筋線維芽細胞を誘導するTGF-β1は増加し、筋線維芽細胞のアポドーシスの誘導に関与するbFGFの発現量は後期に増加し、また、Collagen IIIは早期に、Collagen Iは後期に発現が増加した。 以上より、帰耆建中湯は皮膚潰瘍における炎症期のサイトカインを抑制し、新生血管を増加させ、細胞外マトリックスの再構築を促進することにより、潰瘍治癒を促進させることが明らかとなった。
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