漢方方剤の褥瘡治癒効果を評価するため、24週齢のWistar系雄性ラットを用いた加圧負荷褥瘡モデル(側臥位固定で6時間加圧負荷を4日間反復)を水投与群(対照群)、帰耆建中湯エキス投与(500mg/kg/日)群、十全大補湯エキス投与(500mg/kg/日)群、黄耆建中湯エキス投与(500mg/kg/日)群の4群に分類した。30・日間胃ゾンデにて各エキス含有水を経口投与し、デジタルカメラを用いて連日潰瘍面積の測定を行い画像解析ソフトVH-Analyzerを用いて潰瘍治癒日数を算出した。その結果、加圧負荷ラットにおける潰瘍治癒日数は対照群で29.3±1.0日、帰耆建中湯エキス投与群で23.8±1.0日、十全大補湯エキス投与群で24.5±1.7日、黄耆建中湯エキス投与群で27.5±214日であった。対照群に比較し帰耆建中湯エキス投与群、十全大補湯エキス投与群で潰瘍治癒日数は有意に短縮した。我々は帰耆建中湯が、炎症性サイトカインであるMCP-1、IL-1β、TNF一αを早期に抑制し、血管新生に関与するPDGFを早期に、VEGFを後期に増加させ、筋線維芽細胞を誘導するTGF-β1を増加させ、筋線維芽細胞のアポトーシスの誘導に関与するbFGFの発現量を後期に増加させることを報告しているが、今回、十全大補湯にも褥創改善促進効果があることが明らかとなった。十全大補湯の褥瘡改善効果が、帰耆建中湯と同様の作用機序に基づくものであるのか今後免疫組織学的手法を用いて検討を行う。
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