研究課題/領域番号 |
21590760
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
門脇 真 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (20305709)
|
研究分担者 |
山本 武 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教 (70316181)
影山 夏子 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教 (90342865)
|
キーワード | 葛根湯 / 食物アレルギー / 腸管粘膜免疫系 / 制御性T細胞 / 活性化T細胞 / 末梢性免疫寛容 |
研究概要 |
食物アレルギーの成因には、腸管粘膜免疫系の破綻が関与していると考えられている。従って、葛根湯の免疫薬理学的作用機序は、主に、腸管粘膜免疫系での粘膜型マスト細胞に対する抑制作用や腸管粘膜免疫系での免疫応答バランスの調節作用などが考えられる。本研究は、葛根湯の末梢性免疫寛容誘導作用を介した免疫応答バランスの調節作用を明らかにすることを目的にしている。 BALB/cマウスに鶏卵蛋白を全身及び腸管局所感作することにより、食物アレルギー病態モデルマウスを作製し、腸管粘膜免疫系の検討を行った。結腸全組織、粘膜固有層単核細胞(LPMC)及びLPMCから分離した各種免疫細胞よりRNAを抽出し、サイトカイン等の発現量変化の検討、また、各種CD抗体を用いた免疫組織化学的検討及びフローサイトメーターにより免疫細胞の発現変動の検討を行った。【結果】病態モデルマウスの結腸においてCD4+細胞の増多が観察されたが、葛根湯投与による明らかな変化は見られなかった。また、LPMCでのCD3+CD4+細胞数の解析によっても同様の結果が得られた。しかし、CD3+CD4+Foxp3+細胞(制御性T細胞)の割合は、葛根湯投与により病態モデルマウスに対して約2倍に増加し、CD3+CD4+CD69+細胞(活性化T細胞)の割合は、葛根湯投与により約1/2倍に減少した。さらに、LPMCから分取したCD4+細胞の遺伝子発現解析では、葛根湯投与によりFoxp3 mRNA(制御性T細胞)の発現が増加し、CTLA-4 mRNA(活性化T細胞)の発現が減少した。【考察】葛根湯は、病態モデルマウスの結腸において、亢進した結腸局所の腸管粘膜免疫系を抑制することによりアレルギー性症状を抑制した。この腸管粘膜免疫系の抑制には、葛根湯によるナイーブCD4+T細胞の制御性T細胞への分化誘導を介したエフェクターT細胞の活性化抑制機構が関与することが示唆された。本研究により、葛根湯の免疫系に対する新しい機能が明らかにされ、臨床での新たな適応への科学的根拠を示したものと考えられる。
|