研究課題
【目的】慢性疼痛はQOLを低下させることが知られているが、一般住民における詳細は十分に検討されていない。また近年、慢性疼痛と失感情症の関連が様々な疾患で指摘されており、失感情症及び慢性疼痛を持つ一般住民のQOLの向上が問われている。本年度の研究では一般住民を対象に慢性疼痛の有病率を調査し、慢性疼痛及び失感情症の生活満足度への影響について検討した。【方法】2010年に福岡県糟屋郡久山町の生活習慣病健診を受診しストレス健診を希望した950名(男性331名、女性619名、平均60.1歳)を対象に痛みの有無、痛みのVisual Analogue Scale (VAS)、生活障害のVAS、生活満足度のVAS、失感情症の質問紙The 20-item Toronto Alexithymia Scaleを施行した。生活満足度と失感情症に関しては、痛みのない群(対照群)、6ヶ月未満の痛みを持つ群(急性痛群)、6カ月以上続く痛みを持つ群(慢性疼痛群)の3群に分け、比較検討を行った。【結果】全体の66%が何らかの痛みを有していた(急性疼痛群166名,18%)、慢性疼痛群440名,48%)。生活満足度は、対照群、急性疼痛群に比べ慢性疼痛群で低く、年齢、性別、婚姻状況、教育、経済状況で調整した後も有意に低かった。失感情症は痛みのない群に比べ、痛みのある2群で有意に高かった。生活満足度について慢性疼痛群について重回帰分析したところ、年齢が高く経済状況が良いほど生活満足度が高く、失感情症の程度の高さが生活満足度の低下へ関連していた。痛みの強さ、生活障害は生活満足度への有意な関連は見られなかった。慢性疼痛は生活満足度の低下に関連するが、失感情症を有するとさらに生活満足度を低下させていた。【結論】6カ月以上続く慢性痛を持つ地域一般住民の生活満足度は痛みのない群や急性痛を持つ群に比べて低かった.また生活満足度の低下には年齢の低さ、経済状況の低さ、失感情症の程度の高さの関連が示唆された。慢性疼痛を持つ人の失感情症は、生活における満足度を低下させている可能性がある。
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