様々なストレスで発現変化するタンパク発現調節因子マイクロRNA(miRNA)に着目。マウスを用い、飢餓ストレスがもたらすmiRNAの発現変化をマイクロアレイ法を用い検討し、そのターゲットメッセンジャーRNAおよびタンパク発現を検索する。また、ヒトの血液サンプル(正常、神経性食欲不振症患者)を用いても検討することを目的とする。この研究により、神経性食欲不振症による様々な異常の病態生理の一端が、セントラルドグマ(遺伝子からタンパク発現の経路)以外の観点から明らかとなるのみならず、薬物反応性の検討等重要な知見が得られる事が予想される。 40%食餌制限マウスは、経時的な体重減少を認め、実験に適している事を明らかにした。8-10週齢のBALB/c雌マウスを実験に使用、18日間の食事制限の後、マウスより海馬を摘出した。摘出した海馬よりRNAを抽出し、マイクロアレイ解析を行ったところ、約10個のmiRNAがコントロールと比較して有意に発現増加し、約10個のmiRNAが発現低下している事が判明した。 このうち、miR-X(仮名)についてリアルタイムPCR法を用いて発現確認を行ったところ、実際に飢餓ストレスにより上昇している事がわかった。ターゲットスキャンを用いた、標的解析では、多数のメッセンジャーRNAが候補として存在し、神経の発育やパーキンソン病などに関連してるタンパクをコードするものの可能性が考えられた。 飢餓ストレスにより、予想以上に多くのmiRNAが発現変化する事は、未だ報告のない事実である。今後はこれらのmiRNAが飢餓状態の新たなバイオマーカーとしての役割を担う可能性も考えられ、極めて重要な知見と考えられた。
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