研究概要 |
本研究は超高齢者(85歳以上)の心身の健康、QOLに資する要因を医学領域、心理社会学領域、環境領域から多面的に研究する包括的疫学調査において、特に超高齢者のCKDの評価法とその臨床的意義に焦点を当て検討する3年間の前向きコホート研究である。平成21年12月までに542名の超高齢者の基礎調査を終了した。これまでこの年代の疫学調査は世界的に見ても限られており、特に我が国においては最大規模の調査となった。慢性腎臓病のバイオマーカーの解析を行うに際し、まず調査が適切な方法論に基づいて科学的根拠(エビデンス)を生み出しうるものであることを国内外に示す必要があり、今年度は調査の方法論について論文にまとめた(Arai Y, et al. BMC Geriatrics 2010;10:35)。また、最初の236名について、慢性腎臓病で低下することが知られている血清ビタミンD濃度と病歴、運動・食習慣、血液生化学指標の関連を検討し、ビタミンD濃度が脂ののった魚の摂取量と有意な関連を示すことを明らかにした(Sumiya C, et al. J AM Geriatr Soc 2010;58:242)。また、慢性腎臓病のバイオマーカーであり、動脈硬化性疾患の危険因子でもあるシスタチンC濃度が85歳以上の高齢者においても慢性腎臓病の指標として有用であることを示した(日本腎臓病学会にてポスター発表)。これらの解析は平成21年7月までに基礎調査が終了した236例について行われた。平成22年9月には542名全体のデーターベースが完了し、この集団の解析において口腔機能と全身の骨格筋機能、血液バイオマーカーの関連を検討した論文、および食事調査票を用いた多価不飽和脂肪酸摂取量評価の妥当性について検討した論文を投稿中である
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