研究課題/領域番号 |
21590777
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
村上 正人 日本大学, 医学部, 准教授 (60142501)
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研究分担者 |
金 外淑 兵庫県立大学, 看護学部, 教授 (90331371)
松野 俊夫 日本大学, 医学部, 講師 (20173859)
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キーワード | 線維筋痛症 / 慢性疼痛 / 心身医学 / 行動科学 / ストレス |
研究概要 |
線維筋痛症Fibromyalgia(FM)は、慢性的な全身の広汎性疼痛と多彩な愁訴を呈する病態であるが、慢性疼痛のモデル、心身症としての特性をも濃厚に有している疾患でもある。発症には何らかの遺伝的、生理学的要因に加え、女性の内分泌的な内的環境の変化やライフサイクル上の心理社会的ストレス要因も関係する。病態解明、診断と治療の為には心身医学的な視点が重要である。多くの発症の契機に手術・事故・外傷・出産・過労・過剰運動などの身体的負荷のエピソードがあり、天候、環境変化や不安・抑うつ・怒り・強迫・過緊張・焦燥などの心理的ストレスでも病態が変動する、強迫、完全性、執着などの性格特性があるなど強い心身相関が認められる。患者の尿中VMAやMHPG、5HIAAはうつ病患者と同等に低値であり、FMの病態にモノアミン代謝が関与していることが示唆される。FMの治療には通常の対症療法に加えSSRIやSNRIなどの抗うつ薬、抗けいれん薬、漢方薬など病態に即した薬物療法が重要である。さらにストレス緩和のための生活指導や心身医学的な視点からのカウンセリング、認知行動療法など全人的治療が必須である。この考え方はFMのみならず他の慢性疼痛にも共通しており、「医療モデル」に加え「成長モデル」からアプローチする必要がある。今回の検討からFMの慢性疼痛のモデルとしての特性や心身医学的視点が明らかになった。FMの概念や治療については未だ多くの議論があるが、発症要因の解明、診断と治療の開拓は心身医学が取り組むべき重要な病態の一つと考えられる。
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