研究概要 |
本研究は入院時検査で脂質異常症を認め、かつこれまでにスタチンの投与を受けていない急性期脳梗塞患者を対象に、発症直後からatorvastatin10mgの投与を開始する群と、2週間後から投与開始する群の2群にランダム化し、脳梗塞急性期の進行増悪や脳梗塞の転帰に対する早期スタチン投与の効果を検討することを目的としている。主要エンドポイントは、a.脳卒中再発(TIAを含む)b.早期進行(progressing stroke)の発生,c.3ヶ月後の転帰(modified Rankin scale<2)とし、患者登録期間は平成21年度から平成23年度までの2年6か月間である。本研究では、登録期間中に入院する脂質異常症のない脳梗塞症例や、すでにスタチンを服用していた脳梗塞例は無作為化試験には組み込まないものの、ランダム化群と同様の血液検査、転帰の調査を行った。 179例(男109例女70例)が登録された。その内訳は、1)入院時脂質異常がなくスタチン投与を行わなかったもの95例、2)発症前からスタチン投与が行われておりatrovastatinを急性期から継続投与したもの35例、3)脂質異常症を認めかつスタチンの服用がなくランダム化試験に組み入れられたもの49例(early statin群27例delayed statin群22例)であった。これまでの全体の解析同様、ランダム化群においても、我が国の常用量のatorvastatin(10mg/日)の脳梗塞発症48時間以内の投与開始および継続により、急性期のIL-6値低下作用があることが示唆されたが、急性期の症候増悪に対する有効性は示されなかった。スタチン非服用例への高用量スタチン投与開始の効果を検討する価値がある。以上の成果につき現在論文化を進めている。
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