研究課題
タキサン系薬剤では末梢神経障害のため、患者のQOL低下や投薬中止を余儀なくされるが、有効な治療方法はない。我々は、その末梢神経障害が発症した患者に対する鍼治療を行い、鍼治療が安全で有効な治療方法であることを臨床研究で明らかにした。そこで平成23年度は予防効果について検討した。乳がんの術前・術後化学療法の患者(パクリタキセル療法×12週)のヒストリカルコントロールと鍼治療群の比較検討を行った。末梢神経障害の自覚症状を評価するVASでは、ヒストリカルコントロール群(n=17)は、33.6±9.0mm(投与6回目)が63.5±8.1mm(投与12回目)へと増加したが、投与6回目から実施した鍼治療群(n=8)では、63.5±8.1mmが31.6±9.7mmと改善した。また、末梢神経障害の感覚閾値を評価するタッチテストでは、ヒストリカルコントロール群では、21/36部位(患者数12名)で触覚閾値の低下が認められたが、鍼治療群では2/16部位で改善、9/16部位で変化を認めなった。動物実験:雄性SD系ラット(300-350g)をコントロール群(n=7)、鍼通電刺激群(n=6)の2群に分けた。神経障害モデルは、パクリタキセル(1mg/Kg、隔日4日)を投与することで作成した。鍼通電刺激は右下腿(足三里-懸鍾相当部位)へ2Hz・3mA・30分間とし、初回投与後10日より週2回行った。結果、Von Frey hair testで評価される機械的閾値は、閾値が正常値に戻る日数では両群間に有意な差は認められなかった。しかし、皮膚表面温度は、鍼通電刺激群が改善する傾向を示した。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件)
日本統合医療学会誌
巻: 4(1) ページ: 14-23
全日本鍼灸学会雑誌
巻: 60(4) ページ: 68-76
明治国際医療大学誌
巻: 3 ページ: 28