研究課題
食道および胃の粘膜障害を発生させる原因として最近肥満が注目されている。本研究の目的は、脂肪組織から分泌されるアディポネクチン(APN)が食道や胃の粘膜障害に関与するか明らかにすることである。昨年度までは低APN血症がヒト食道炎発症のリスク因子であること、APNKOマウスでエタノール胃炎が悪化する機序にPGE2が関与する可能性を示した。今年度は以下の検討を行なった。1)APN KOマウスでエタノール胃炎が増強される機序の追加検討・ラット由来胃粘膜上皮細胞RGM-1をエタノールに暴露するとPGE2の上昇を認め、細胞を事前にAPNで培養するとこの上昇がさらに増強された。この結果より、APNはストレス環境下で胃上皮細胞から分泌されるPGE2の発現を増強し、それによって胃粘膜防御に寄与する可能性が示唆された。・RGM1を用いたwound assayにおいてAPN添加群では細胞遊走能が亢進することを昨年度示した。この培養液中のPGE2濃度を測定すると、APN添加群は非添加群に比べて高値を示した。Wound assayにおいてCOX-2阻害薬を添加すると細胞遊走能が阻害された。遊走細胞におけるCOX-2発現を免疫染色で確認すると、APN添加群は非添加群よりもCOX-2の発現が増強されていた。以上より、APNはCOX-2-PGE2系を介して胃上皮細胞の遊走能を亢進させる可能性が示唆された。2)低APN血症がヒト胃炎発症におけるリスク因子であるか否かの検討・人間ドック受験者2400人を対象に解析すると、低APN血症群ではびらん性胃炎の発生率が高い傾向を認めた。・既知のリスク因子を加えて多変量解析を行なうと、低APN血症はびらん性胃炎の独立したリスク因子であった。
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