研究課題
Helicobacter pylori(Hp)は、1994年にWHOより胃癌の1群のdefinite carcinogenに認定された。その後も動物感染モデルや早期胃癌患者における除菌の胃癌発生予防効果などの検討から、Hp感染と胃癌との密接な関係が証明されているが、そのメカニズムについては不明な点が多い。Hpのゲノムの外来性遺伝子群に細胞空胞化毒素関連蛋白(CagA)の遺伝子cagAを有する株がある。CagA抗体陽性は陰性者に比べ、胃癌のリスクが41倍も高いこと、CagAのトランスジェニックマウスでは、胃癌・小腸癌が有意に発生することから、CagAは胃癌発生に関わる細菌由来のoncoproteinとされている。近年、microRNAは他の遺伝子の発現を制御することにより細胞の増殖・分化において重要な役割を果たしていることが明らかにされ、癌遺伝子や癌抑制遺伝子のような働きをして腫瘍形成に深く関わっているmicroRNAが同定されてきている。【研究の目的】本検討では、Hp感染の胃癌発生機構を明らかにする目的で、CagAの胃粘膜でのmicroRNA発現に及ぼす影響について検討する。1. 胃粘膜上皮由来培養細胞でのCagA発現に伴うmicroRNA発現の解析:Tet-offシステムを用いて、ラット胃粘膜上皮由来培養細胞株のRGM-1細胞に、CagAを遺伝子導入した細胞株を作成し、ラットmicroRNA arrayを用いて238microRNAに関し、CagA発現に伴うmicroRNA発現の変化を解析したところ、CagA発現にともない発現が2倍以上、あるいは2分の一以下に発現が変化したものが21microRNA認められた。2. Tet-off CagAトランスジェニックマウスにおける胃粘膜上皮細胞でのCagA発現に伴うシグナル伝達機構、microRNA発現の検討:Tet-offシステムのtTAを発現するトランスジェニックマウスとTREの下流域にABCCC CagAを組み込んだトランスジェニックマウスを作成し、それらを掛け合わせることにより、ダブルトランスジェニックマウスの作成を行った。現在、CagA発現ダブルトランスジェニックホモマウスの胃粘膜よりRMAを調整し、マウスmicroRNA arrayを用いて、CagA発現に伴う胃粘膜でのmicroRNA発現の変化を網羅的に解析中である。3. CagAトランスジェニックマウスの腫瘍形成に及ぼす胃粘膜の炎症の影響:マウス胃炎モデルとTet-off CagAトランスジェニックマウスの掛け合わせを行い、胃腫瘍発生の差異を検討する目的で、マウス胃炎モデルを入手検討中。
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