研究概要 |
【研究の目的】胃の発生にCagA陽性H.pyloriの持続感染が密接に関与していることが明らかにされているが,詳細な機構は不明である.我々はmicroRNA arrayにより,CagA発現に伴い変化するmicorRNAを検索し,癌抑制遺伝子let-7の発現が1/2に低下することがわかった.CagAのlet-7制御機構を解明することを目的とした.【研究実施計画】ラット胃粘膜上皮由来細胞株RGM-1にTet-offシステムによりCagA (ABCCC)を発現させた細胞を作製した.let-7の発現制御機構を明らかにするためlet-7のプロモーター領域のメチル化解析を行い,さらにDNA methyl transferase、Polycomb遺伝子EZH2の発現を調べた.更に,CagAトランスジェニックマウスを作成し解析した.【結果】CagA発現細胞に脱メチル化剤を作用させると,let-7cの発現が回復した.さらにCagA発現に伴ってlet-7cのプロモーター領域のメチル化の亢進を認めた.また,CagAにより、c-mycが発現し、miR26a、miR101発現を介し、DNMT3B、EZH2の発現が誘導された.CagAトランスジェニックマウスにおいて,野生型と比較して上記遺伝子の発現異常を認めた.【結論】胃粘膜上皮細胞において、CagAはメチル化を介し,let-7発現を抑制し,Rasタンパクの発現を亢進させることが明らかとなった.H.pylori感染の胃癌発生に関わる機構において,DNA・ヒストンのメチル化異常・Polycomb遺伝子/microRNA発現異常が関与している可能性が示された
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