研究概要 |
【目的】上皮増殖因子(EGF)は、消化管粘膜修復、再生を惹起する粘膜防御因子である。炎症性サイトカイン(IL-8 : GPCR agonist)は、好中球遊走促進などで消化管炎症の病態で重要な役割を演ずるとともに、細胞増殖作用を持つ。膜型メタロプロテアーゼ(ADAM)がEGF受容体(EGFR)リガンドを放出させた後EGF受容体(EGFR)は、リン酸化すると同時に、EGFリガンドC末端が、核移行し転写因子として働くことが明らかになった。IL-8によるEGFRの活性化およびHB-EGF-C末端核内移行機序については明らかでなく、HB-EGF-C末端核内移行のメカニズムがIL-8による細胞増殖に関与しているかどうかを検討した。【方法】大腸癌細胞(HT-29)を使用した。IL-8による細胞増殖は、日毎に細胞数を数え、細胞増殖カーブで検討した。IL-8にて刺激後EGFRリン酸化を調べ、ADAM阻害剤、内因性ADAM10, 12, 17欠失によるEGFRリン酸化阻害効果を調べた。アルカリフォスファターゼで標識したEGFリガンド発現細胞を使ってEGFリガンド放出を調べた。HB-EGF-C末端の核内移行は、蛍光免染にて検討した。HB-EGF-C末端の下流にあるc-Myc蛋白の発現をIL-8にて刺激後Western解析にて検討した。【結果】IL-8の刺激により、細胞増殖は亢進した。IL-8は、EGFリガンド放出、EGFRのリン酸化およびHB-EGF-C末端核移行を惹起した。さらにc-Myc蛋白発現を増加させた。それは、ADAM阻害剤にて阻害できた。ADAM10の欠失により、IL-8によるEGFRリン酸化が抑制された。【結論】IL-8による細胞増殖は、EGFRのリン酸化とHB-EGF-C末端の核内移行が関与すると考えられる。
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